icon-anchor 労働安全衛生について

「タイの労働安全衛生について」

タイの労働安全衛生については、改正前の1998年労働者保護法の第100条
から第107条までに規定があったが、その8か条を削除し、対応する罰則
も改正されている。

 今回の労働安全衛生環境法は、労働安全衛生環境全体をカバーする
ものとして、労働者保護法の労働安全に関する規定に代わるものとして
制定されたもので、日本も以前は労働基準法に規定されていたが、1972
年に労働安全衛生法として基準法から独立しているのである。

以下、重要な部分を抜き出して紹介する。全部は紹介できないので、疑問
があれば、筆者へ照会されたい。

1)適用の範囲
中央政府、地方政府、地方自治体、その他省令で定める事業には適用
されない。

2)使用者の義務
第6条では、安全配慮義務を使用者に課すと同時に労働者も使用者に協力
する義務を課している。この条項には罰則はないが、違反すれば民商法典
の不法行為による民事責任を負うことになろう。

3)省令による安全基準と罰則
第8条で安全基準は省令で規定することが改めてうたわれている。

危険の種類ごとの安全基準は、労働者保護法第103条を根拠とする
省令として公布されているので、今後本法が根拠となることになる。

この省令に違反した場合、懲役1年以下もしくは40万バーツ以下の罰金
または併科である。

ちなみに、なぜ省令そのものに罰則がないかであるが、「罰刑法定主義」と
一般に呼ばれている原則で、国民に重大な影響を与える刑罰は法律に
よることが求められているのであり、タイの憲法(1997年、2007年とも)
でも、そのことがうたわれている。

なお、本法74条では、労働者保護法の第8章(100条から107条)により
公布された省令、告示、規則は、本法によるものが公布されるまで
有効であると規定されている。

4)民間安全訓練機関等の登録
危険の測定、検査、証明、評価、安全衛生訓練を行う民間事業者は労働省
に登録することが定められている(11条)。

5)危険の周知
使用者は、労働者に対して危険の所在を通知し、新入労働者、職務変更等
の労働者に手引書を配布しなければならない(15条)。違反は3か月以下の
懲役もしくは10万バーツ以下の罰金、または併科である。

労働者についても、自分だけで解決できない危険については安全管理者等
への報告を義務付けている(21条2項)。

6)安全管理者の任命
使用者は安全管理者、委員等を任命し訓練を受けさせる義務がある(16条1項)

また、新入労働者、職務変更等の労働者に対し、並びに機器の変更につい
ては業務開始前に訓練しなければならない(16条2項)。

本条に違反は6か月以下の懲役、もしくは20万バーツ以下の罰金、または併科
である。

本条に関しては、2006年5月16日付省令で職場における安全管理体制が定め
られている。本省令は職種、従業員数に応じて安全管理者の任命、訓練が定
められているもので、本法と合わせて安全に関する重要な省令となっている。

7)危険の警告表示
使用者は、危険について警告書を掲示する義務がある(22条)。これに違反
すれば3か月以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金、または併科である。

8)防護用具の使用
使用者は、労働者に適切な防護用具を使用するよう義務付けなければならず、
使用しない場合、使用するまで作業を中止しなければならない(22条)。
これに違反すれば3か月以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金、または
併科である。

9)その他の使用者の義務
36条で以下のように規定されている。
①危険の予測
②労働者に影響のある労働環境の調査
③安全衛生環境の計画策定
④以上の結果を大臣に報告すること

10)安全検査担当官
事業所への立入のほか、違反停止、改善命令等の権限を有する(36条)。

11)労働安全衛生環境委員会
労働大臣への提言などを行う(25条)

12)労働安全衛生環境基金
政府予算、罰金などを原資とする基金を設立、安全運動などに使用する
(44,45条)。

13)労働安全衛生環境協会(サターバン)
労働安全衛生環境問題を調査し、安全活動を促進するために本法施行の
日から1年以内に設立することになっている(52条)。

14)罰則
前述のとおり厳しい罰則が設けられている(53-72条)