タイ国の会社法(非公開株式会社)のあらまし

タイ国の会社法(非公開株式会社)のあらまし

更新日 2020年10月26日 元田時男
更新日2023119日 川島和士

 

 I 節 会社の種類(パートナーシップ、非公開株式会社、公開株式会社)

タイの会社の種類は以下の4種類に分けられる。そのうち(1)、(2)、(3)は民商法典に規定がある。

1 普通パートナーシップ

無限責任社員のみで構成され、日本の合名会社に相当する。英語ではOrdinary
Partnershipと称され、中国語では両合公司と称されている。

2 有限パートナーシップ

無限責任社員と有限責任社員で構成され、日本の合資会社に相当する。英語ではLimited Partnership と称され、中国語では有限公司と称されている

3 非公開株式会社

全て有限責任の株主のみで、設立は一般大衆に対する公募は行われず、家族(親会社)など内輪の者のみが株式を引受けるもので、法律自体も緩やかな規定となっている。一般には非公開株式会社と称されている。タイ国ではもっとも多い組織であり、日系企業のほとんどもこの形式を採用している。

4 公開株式会社

株式の募集はタイ国証券取引所を通じて行われ、証券取引所に上場されることが前提となっている。一般大衆が株主となるため、情報の公開等はタイ国証券取引委員会の厳しい規則が適用される。

 II 節 非公開株式会社(タイで最も多い会社組織)

1.登録資本金と日本の授権資本との違い

タイ国の会社法と日本の会社法は、色々な点で異なり、設立にあたって、登録資本金(Registered Capital)と日本の授権資本の違いを知っておく必要がある。

日本では、従来の商法の会社に関する規定が1997年以来、数度改正され、最終的に独立した「会社法」として2005年に成立したが、定款において会社が発行する株式の総数(発行可能株式総数の)を授権資本と称し、設立に際して発行する株式は総数の4分の1以上を発行、設立後は、取締役会または株主総会の決議により新株を発行する、いわゆる授権資本制度をとっている。それに対してタイ国の非公開株式会社の場合は、登録資本金(会社が発行する株式の総数)に相当する株式を、設立に当たって全数発行、各株式について25%以上払い込めば会社は成立する。その後は、取締役の請求により未払い分を払い込む。つまり、株式の分割払いである。払込まれた株式の金額は払込済み資本金と称されている。

BOIの奨励事業を営む企業の場合は、正式操業開始登録申請時までに全額払い込むことを要求されるので注意すること(奨励証書の条件欄に記載されている)。

2.株式に関する規定

以下、民商法典の条文により項目別に説明するが括弧内は民商法典の条項である。

株式は日本と異なり全て額面株で、無額面株はない。額面は最低5パーツであり(1117条)、通常は百バ−ツ、千バーツが多い。額面以下での発行は禁止されている(1105条)。 種類としては、普通株と優先株、記名式と無記名式がある。額面以上での発行は、基本定款に定められている場合は可能であるが、超過額の払込は最初の払込と同時に行わなければならない(1105の2条)。また、超過額は資本準備金に繰り入れなければならない。設立時には、各株式について25%以上払い込めばいいが、残りについては、総会において別段の定めがない限り、取締役が何時でも請求できる。その請求は21日前に書留郵便で請求しなければならない。払い込みがない場合、株主は、

(1)払込むまでの期間、利息を支払わなければならない。
(2)株券を没収されることがある。
(3)譲渡の登記を会社は拒否することができる。

株券の記載事項は以下の通りで、取締役の少なくとも一人の署名、社印が必要である(1128条)。
(1)会社名
(2)番号
(3)一株の額面価額
(4)全額を払い込んでいないときは、一株あたりの払込済み金額
(5)記名式のときは株主名、または無記名式である旨

無記名株券は付属定款に定めがあり、かつ、全額払い込んだ場合に限り発行できる(1134条)。

付属定款で取締役を株主とする場合、その株券は記名式でなければならない(1137条)。

株式の譲渡は、無記名式は自由。記名式も自由であるが、付属定款によって制限することができる(1129条、合弁の場合はよく知らない者に譲渡されると困るので、付属定款に譲渡制限を設けるのが普通である)。その他、法律で譲渡制限している株式は下記のとおりである(記名式の場合)。

(1)100%払い込まれていない株式(会社は譲渡の登記を拒否できる)(1130条)
(2)株主総会前14日間の株主名簿閉鎖期間(1131条)
(3)他の法律でタイ国籍者が一定の割合を保有しなければならないとき
自社株の保有、質受けは禁止されている(1143条)。

株主管理台帳は、会社登記のときから本店に備え付け、株主名簿は毎年少なくとも1回総会の日から14日以内に写しを登記官に提出する必要がある(1139条)。
株主管理台帳の記載事項は次の通り(1138条)。

(1)氏名、住所、職業、持ち株数、株式番号、払込額
(2)登記の年月日
(3)登記抹消の年月日
(4)発行された株券の数、日付、各株券の株式数
(5)記名式、無記名式でなくなった日付

以上株式に関する規定を見てきたが、合弁の場合、株式の譲渡制限を設ける必要があること等勘案すると、記名式、普通株が一番無難であろう。ただし、死亡による相続には対抗できないと思われる。

3.株主数、株主の権利、義務

株主の数は、かつては7名を下回ったとき、裁判所は解散を命ずることができるとされていたが2008年3月3日の官報で改正が公布され、公布の日から120日を経過した日から3名を下回るときに解散を命ずることができることとなり、株主数は3名以上であればいいことになった。さらに、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、2名を下回るときに解散を命ずることができることとなり、株主数は2名以上であればいいこととなる(1237条)。
株主の権利としては、全ての総会に出席(他人に委任することもできる)ことができる(1176、1187条)。

また、総株式数の5分の1以上を代表する株主は、共同して取締役に臨時総会を招集するよう請求できるほか、30日以内に開催されない場合、5分の1を代表する株主が自ら招集できる(1173、1174条)。
法律または付属定款に違反した総会決議を裁判所へ申立てることにより無効とすることができる。ただし、申立ては決議の日から1ケ月以内にすること(1195条)。

取締役が会社に損害を与え、会社が損害賠償を要求しないとき、株主は誰でも賠償を要求できる(1169条)。

一方、株主は額面まで、取締役の請求により払い込む義務があるが(1106条)、そこまでの有限責任であり、会社の債務には責任を負う必要はない。

4.株主総会

会社登記の日から6ケ月以内に開催しなければならないので、初年度は注意すること(1171条)。

その後は、毎年少なくとも1回開催しなければならない(1171条)。これは定時総会と呼ばれる。定時総会は会計年度終了後、財務諸表の監査と総会提出・承認(1197、1198、1214条)、取締役、会計監査人の任免(1151、1152、1209条)のため開催されるのが一般的で、この場合、1197条の規定により会計年度終了の日(決算日)から4ケ月以内に会計監査人が監査報告を付して総会で決算監査報告し、承認を受けなければならない。

総会は、取締役によって招集されるが、その他緊急の場合の外、次の場合は臨時総会を開催しなければならない。

(1)取締役会が必要と認めたとき(1172条1項)
(2)欠損金が資本の半分に達したとき、取締役は直ちに総会を召集、開催しなければならない(1172条2項)。
(3)株式総数の5分の1以上を代表する株主から請求があったとき(1173条)
(4)会計監査人に欠員が生じたとき(1211条)

招集方法は、少なくとも7日前に当該地方の新聞に1回以上公告し、かつ、少なくとも7日前に郵送の方法によるとされているが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、記名式株券の株主に対しては、少なくとも7日前に書留郵便で送付し、無記名式株券の株主に対しては、少なくとも7日前に地方紙に少なくとも1回または電子媒体で公告することとなる(1175条)。

特別決議目的の総会招集通知の場合、14日以上前に履行すること(1175条)。

総会は合計して会社資本の4分の1を代表する株主の出席をもって定足数とするとされているが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、合計して会社資本の4分の1を代表する株式を有する2名以上の株主または株主の権限受任者が出席しない限り、総会はいかなる議決も行うことができないこととなる。委任出席も可能(1178条)。定足数につき付属定款で50%、60%と法律より厳しくすることは可能である。

総会に出席する権利のある者は株主全部および株主から委任を受けた者であるが、次の者は議決権がない。

(1)取締役から請求された株式金額を払い込んでいない者(1184条)
(2)決議事項に特別の利害関係を有する者(1185条)
(3)付属定款で特に定めている者(付属定款で一定数以上の株式を保有すれば投票権ありと定めることができる。また、共同で一定数に達すれば代理人を任命、投票することはできる)(1183条)
(4)無記名株券の所有者、ただし総会前に株券を会社に提示した場合は権利あり(1186条)
(5)総会の議長は、取締役会の議長がなり、その議長が出席している場合はその者(1180条)。

総会に議長をおかず、または、その議長が開会時間後15分以内に会場に到着しないときは、出席者の1人を議長に選任することができる(1180の2条)。
議決の方法は二種類ある。挙手と秘密投票である(1190条)。挙手の場合、出席者一人(代理人を含む)で一票あることに注意願いたい(1182条)。つまり、出席者の多い方が勝ちである。もう一つは秘密投票で、この場合は1株に1票である(1182条)。秘密投票は、少なくとも株主2人の要求があった場合可能である(1190)。また、従来は、附属定款は取締役または株主間で結論に至ることができない問題または争点の解決方法について定めてもよいとされてきたが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、附属定款は取締役または株主間で決議、結論に至ることができない問題または争点の解決方法について定めることとなる(1108(1))。例として、付属定款で議決は秘密投票のみと定めることも可能であるので、合弁の場合は秘密投票である旨付属定款に記載することが肝要であろう(とされてきた。この点2023年2月7日以降は株主数が2名以上でよくなることにより、秘密投票の結果が相手方に分かる図式となるだろう)。

決議は通常過半数で決定するが、同数の場合、議長が追加の1票を持つ(1193条)。付属定款で3分の2などと定めることは可能である。
特別決議を要する場合、従来は総会を2回開催するなど手続きが大変であったが、この条項1194条は2008年3月3日の官報で改正が公布され、1回の開催で、出席株主の議決権の4分の3以上の賛成があれば特別決議は成立するように改められた。また、改正では特別決議の場合の召集状は14日以上前に出し、かつ、地方紙に1回広告しなければならない。

特別決議を要する事項は次の通りである。

(1)基本定款、付属定款の改正(1145条)
(2)新株発行により増資するとき(1220条)
(3)新株を発行するとき金銭以外で払い込むとき(1221条)
(4)減資するとき(1224条)
(5)総会において解散の決議をするとき(1236条)
(6)他の会社と合併するとき(1238条)

5.取締役および取締役会議

取締役の数は一人以上で、総会によってのみ任免される(1151条)。取締役の数、報酬は総会により定められる(1150条)。取締役が破産したとき、または成人被後見人となったとき、その席は空席となる(1154条)。付属定款で取締役を株主とする場合、保有する株式は記名式でなければならない(1137条)。

取締役の任期については次の規定がある。

(1)会社登記後、最初の総会およびその後の毎年の最初の総会において、取締役の3分の1が辞任しなければならない(1152条)。
(2)退任予定の取締役は再選を妨げられない(1153条)。

取締役の登記は就任の日から14日以内(1157条)。
取締役、会社、第三者等の関係は、民商法典の委任に関する規定に従う(1167条)。
取締役会議は付属定款に定めがないとき次の規定による(1158条)。

(1)決議は過半数によって決定。同数となった場合、議長が追加の1票を持つ(1161条)。

(2)取締役は誰でも取締役会議をいつでも招集できる(1162条)また、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、取締役会はいずれかの技術による通信連絡により行うこと(テレビ会議(Web会議))により、会議場に出向かないことができるとなる。ただし、会社の附属定款で禁じられている場合を除く(1162/1)。
(3)取締役会は取締役会議の議長を選任することができる。また、その任期を定めることができる(1163条)。
(4)取締役会は支配人または取締役から成る小委員会にその権限の一部を委任することができる(1164条)。

取締役の義務としては、次のことに連帯して責任を負うことが定められている(1168条)

(1)株主による株式の払込
(2)法が定める会計帳簿、書類を作成し、保管すること

現金出納帳、資産、負債を表す書類(1206条)
貸借対照表、損益計算書(1196条)
株主名簿(1139条)
株主総会、取締役会議の議事録(1207条)

(3)法の定める通り配当または利子の分配
(4)株主総会決議の正しい執行

取締役は、株主総会の同意なしに会社と同一の商取引を行うこと、また、同一の事業を営む無限責任のパートナーとなることが禁じられている(1168条)。
取締役が会社に損害を与えたとき、会社は損害賠償を請求できる。会社が訴追しない場合、株主が訴追できる(1169条)。ただし、株主総会が承認した事項につき、そのとおりに履行した取締役による責任は、賛成株主と会社に対しては免責される(1170条)。

取締役会での委任、持回り会議
これについては、従来明確な規定がなく付属定款に可能な旨規定している企業もあったが、2009年9月10日付Department of Business Development局長名で通達が出され、取締役会議への委任状による出席、持回り会議を付属定款で定めることはできないこととなった。
元来、株式会社においては、株主総会では会社を運営する能力がある者を取締役に選任し、会社の運営を任せているのであるから、当然の通達であろう。

6.配当の分配

総会の決議が必要、ただし、取締役が年間の利益が十分にあると判断したとき、配当ができる。なお、利益以外から支払ってはならない(1201条)。また、配当金の払込は株主総会または取締役会の決議から1ヶ月以内に行うこととされてきたが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、配当金の払込は株主総会または取締役会の決議から1ヶ月以内に完了することとなる(1201条四段)。

配当の分配毎に、利益の少なくとも20分の1を資本金の10分の1に達するまで準備金に繰入れなければならない(1202条)。

配当の通知は株主名簿に記載されている株主に対して文書で通知しなければならないが、無記名株主に対しては、少なくとも地方紙に1回公告しなければならない(1204条:2008年3月改正、3月3日から120日経過した日から施行)。

7.資本の増加(増資)

新株発行による増資は株主総会の特別決議を要し(1220条)、その特別決議は決議の日から14日以内に登記を要する(1228条)。

新株の払込は金銭によること。金銭以外の場合は株主総会の特別決議を要する(1221条)。
各株主はその持ち株数に比例して新株を引受ける権利(引き受けない権利も)を有する(1222条)。

8.資本の減少(減資)

株主総会の特別決議を要する(1224条)。
額面価額を減少させる方法と、株式数を減少させる方法がある(1224条)。
資本金総額の4分の1を下回って減資することはできない(1225条)。
減資を提議するときは少なくとも1回(2008年3月改正前は7回であった)、当該地方紙に公告すると共に債権者全員に通知しなければならない。通知の日から30日以内(2008年3月改正前は3ヶ月であった)に異議が申し立てられなかった場合、異議がないとみなされる。異議が申し立てられた場合、債務を返済するか、保証しない限り減資はできない(1226条)。減資の特別決議は、決議の日から14日以内に登記を要する(1228条)。

9.会社の決算

取締役は会社の収益、支出ならびに資産と負債に関する帳簿を作成しなければならない(1206条)。
少なくとも12ケ月に一回、貸借対照表、損益計算書、事業報告書を作成しなければならない(1196、1198条)。

貸借対照表は少なくとも1人の会計監査人によって監査され、貸借対照表の日付から4ケ月以内に総会に提出しなければならない。また、その写し1部を総会の少なくとも3日前に株主に送付することを要し、事務所内で公開しなければならない(1197条)。誰でも最新の貸借対照表を入手する権利がある(1199条)。

10. 会計監査人

非公開株式会社は中小企業向きの組織であるが、会計監査については、2004年会計業法37条、2000年会計法11条により公認会計士を会計監査人としなければならない(法人所得税申告書添付の決算書の監査は2001年3月12日付国税局長告示により、株式会社については公認会計士)。
会社の利害関係者、取締役、会社の代理人、従業員は会計監査人となれない(1208条)。 つまり、全て外部監査であることに注意願いたい。
毎年定時総会において選任、再選可能(1209条)。
空席が生じた場合、直ちに選任のため臨時総会を招集しなければならない(1211条)。
会計監査人は定時総会において貸借対照表および会計簿(財務諸表)について報告の義務がある(1214条)。
会計監査人の報酬は株主総会で定める(1210条)。

11. その他の重要事項

(1)社債は発行できない(1229条)
(2)自己株の保有、質受けはできない(1143条)
(3)株主数は3名以上を必要とする(1237条)。かつては7名以上であったが、既述のとおり、2008年の改正で3名を下回った場合、裁判所は解散を命令することができると改正された。さらに2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、2名を下回るときに解散を命ずることができることとなり、株主数は2名以上であればいいこととなる(1237条(4))。

(4)従来、株式会社の合併については新設合併のみを指していたが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは下記のとおりとなる。株式会社は特別決議により合併することができる。2社以上の会社は、下記いずれかの形態で合併する。

1) 新会社を設立する合併。被合併会社は全て法人格が消滅する(新設合併)。

2) いずれか一社が法人格を維持し、その他の被合併会社は法人格が消滅する(吸収合併)。

12. 会社設立の手順

会社登記の担当官庁は、商務省の企業活動開発局(Department of Business Development)である。
登記は、以下の三つの手順に従って行われる。

1)商号の予約

他の会社の商号と重ならないよう、予め会社登記事務所に予約するもので、第1、第2、第3希望を提出する。第1希望が重なり、第2希望が重ならない場合、第2希望が許可される。
最近はインターネットで自ら調査することができるようになっており、その場合結果は直ちに判明する。
ただし、許可から30日以内に次の基本定款の登記をしないと無効となる(再予約は可能)。

2)基本定款の登記

タイ国の会社法では、定款は基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association,By−Law)の二つがある。前者は会社の目的が主な内容で、後者は会社の内規である。
基本定款は、発起人(自然人)3名以上とされているが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは、2名以上(1097条)の署名により社名(上述の許可を受けた商号)、住所、登録資本金額、1株の額面、総株数、株主の責任は有限であることの宣言、会社の目的、発起人の氏名、住所、年齢、職業、引受株式数(発起人は最低1株を引き受けなければならない)を記載したもので、発起人3名の署名を要する。これを会社登記事務所で登記する。
(注:発起人が外国人の場合、パスポートの写し、タイ人の場合身分証明書の写しを必要とする。)
会社の目的は、日本の場合と大きく異なり、会社特有の目的

(***の製造販売など)の外に、会社の運営上必要な一般的な業務(担保の提供、融資を受けることなど)が記載され、これは通常、商務省の見本に従って作成される。官庁などの諸手続きには、会社の目的を提出しなければならないことが多く、日本と異なり、目的にない業務はできないことになっているので注意すること。
基本定款の登記に当たっては、登録資本金に関係なく、一律500バーツの登記科を納付しなければならない。なお、登記された基本定款の有効期限は従来10年間であったが、2022年11月8日の官報で改正が公布され、公布の日から90日を経過した日(2023年2月7日)からは3年間となる(1099条)。

3)全株式の引受、創立総会の開催、会社設立登記

発起人を含め全株式が引き受けられたら、創立総会を開催しなければならない。
創立総会では、次の事項が決議されなければならない。

1)株式引受人の名簿の確認(氏名、地位、住所、引受株式数)
2)付属定款の採択(注:企業活動開発局の見本ひな型がある)
3)発起人の行為、支払った経費の追認(追認されなかった場合、発起人は連帯して無限責任を負う)
4)優先株がある場合、優先株に関する事項
(注:1142条で優先権は変更することができないので注意すること)
5)金銭以外の方法によって全額あるいは一部払込に対して発行される普通株、優先株、払込額の決定。役務または財産の報酬として払込まれたとみなされる普通株、優先株を発行する場合、明細を明確にして総会に提出
6)最初の取締役、会計監査人の選任、権限の決定 創立総会後3ケ月以内に会社設立登記を行わなければならない(1112条)。

4会社設立登記

(注:発起人は創立総会で取締役に事務を引継ぐため、会社設立登記は取締役の仕事となる)
株式引受人が引受株式の全てについて25%以上払込んだら登記を行うことができるが、登記事項には以下を含まなければならない(1111条)。

1)普通株と優先株に分けて、引受けまたは割当てられた株式の総数
2)金銭以外によって全額または一部を払込む普通株式、優先株式の数、部分払込の場合
はその払込済み額
3)各株式について金銭により払込まれた額
4)株式の代金として受領した総金額
5)全取締役の氏名、住所、職業
6)取締役の権限。複数の取締役がそれぞれ別の権限を有する場合、それぞれの権限
(注:会社を代表する署名も単独、複数など会社の事情により様々な態様があるので、それに合わせて署名権者を登記する。また社印も署名と同時に押印して会社を拘束するとするのが普通であるから社印も登記する)
7)会社の存続が一時的なものであれば、その期限
8)本店、全支店の所在地
9)その他一般に周知させた方が適当と認める事項

以上基本定款から始まって最後の登記まで、全てタイ語である。特に、最後の登記の際は、かなり分厚い書類に代表者が署名をしなければならないので、タイ語の読めない外国人は登記申請代理人(弁護士等)と良く内容を確認することが大事である。また、英語で作成した書類は、全てタイ語に翻訳して登記所へ提出することになる。
登記科は登録資本金額に関係なく一律5千バーツである。

5)設立登記事務の簡素化

2008年3月に法律が改正されて1111/1条が追加され、以下の手続きが完了しておれば基本定款の登記と会社設立登記を同日に行うことができるようになった。

1)株式引受人が揃っている。
2)創立総会で議題が発起人と株式引受人全員が議題を承認した(この場合の議題は、1108条で付属定款の採択、発起行為の承認、発起人への支払い、優先株、金銭以外による出資、取締役の選任、会計監査人の選任がある)。
3)発起人が事務を取締役へ引き継いだ。
4)取締役が株式払込みを請求し、払込まれた。

6)外国人事業法の規制回避のためのタイ人からの(不正な)名義借りの防止策

本件については別項タイの外資政策においても述べているが、名義借りを防止するため、会社登記の段階で名義借りを防止する目的で、商務省企業活動開発局中央登記部では、2006年7月20日付登記規則102/2549で、外国人とタイ人が出資する会社登記に際し、タイ人本人の資金に関する銀行の証明書等を要求していたが、その規則を廃止して、2012年11月22日付商務省企業活動開発局長名による、登記に関する以下の内容の命令を出している。

パートナーシップもしくは株式会社の設立登記申請者は、以下のいずれかの場合、タイ国籍者でパートナーもしくは株主となる者全員について、本人の財政状況について銀行による資料および証明書を提出しなければならない。

(1)パートナーシップもしくは株式会社で、外国人のパートナーもしくは株主の、出資金もしくは登録資本金の持分が50%を超えない場合。

(2)株式会社で、外国人の株主はないが、外国人が単独もしくは連名で会社を代表する署名権を有する取締役である場合。

(以上)

 

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