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労働組合について
  2004年7月24日
はじめに
 労働組合はあったがいいか、無い方がいいか、意見の分かれるところであるが、労働組合はいずれできると考えた方が無難である。また、組合があれば交渉も手ごわい相手となることは覚悟しなければならないが、無ければルールを無視した実力行使に出られることもあるのである。そこで今回は労働組合について法律ではどう定めているかを概観したい。
 なお、労使紛争解決のルールについては、本お役立ち情報Vol.10に掲載しているので参照されたい。

労働組合の結成(法人登記が必要)
 日本の憲法28条では労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しており、これが労働組合法の基本となっているのであるが、タイでは憲法45条で組合、団体の結成の自由
を保障している。労働法では「1975年労働関係法」(以下法と呼ぶ)の36条において、労働組合が設立できること、その目的は雇用条件、利益確保、保護、労使間の良好な関係維持にあることが定められている。
 また、組合は登記して法人格を有することとなっている(法87条)。
 結成手続きは、同一使用人の下で働くか、同一業種の労働者からなる10人以上の発起人(タイ国籍者で法的行為能力を有すること)が規約を作成、登記する(法88、89条)。
 登記官は発起人の資格が要件を満たし、規約が、目的に沿っておれば登記証明を発行して(法91条1項)、官報で告示する(法92条)。
 発起人は、登記の日から120日以内に第1回総会を開催して委員を選出、同時に登記官に提出した規約を承認、その日から14日以内に規約の写し、委員の氏名、住所、職業を登記する(法93条)

労働組合員、委員の資格(管理職はそれ以外の労働者の組合に加入できない
 組合に加入できる労働者の資格は、同一の使用者の下で働くか、同一業種の労働者で満15歳以上でなければならない(法95条)。ここで注意しなければならないのは管理職(労働者を雇用、減給、解雇、懲戒する権限を有する者)は、管理職以外の労働者で結成された労働組合の組合員にはなれないことで、その反対も認められないことである(法95条3項)。これは日本の労働組合法2条と同様、組合の自主性が失われないようにするための配慮であることは明らかである。
 委員会、小委員会の委員の資格は、以下のとおりである(法101条)。
(1)当該労働組合の組合員であること
(2)出生によりタイ国籍を有すること
(3)満20歳以上であること

労働組合の役割
 法98条により以下のとおり定められている。(4)で経営にも参加できるような役割を持たせていることに注意されたい。具体的にどのようなことかは明確ではないが、欧州における労働者の経営参加を意識した条文のように感じられる。
(1)使用者または使用者協会に対して要求を提出し、交渉し、仲裁裁定を受理し、または協約を締結する。
(2)労働組合の目的に合った組合員の利益のための活動を企画、執行すること
(3)職業紹介に関する情報を提供すること
(4)経営、労働に関する問題の解決、紛争の解決のための助言を行うこと
(5)総会の承認により組合員の福祉、公共の利益のための資金、財産を提供すること
(6)規約による料率で入会金、組合費を徴収すること

労使協議の場における労働組合

(1)就業規則と労働協約
 労使間では、労働条件をめぐって協議が行われることが通常であり、そのため法では協議および協議が紛争した場合のルールを定めている。そこで、労使間の協議の場において労働組合がある場合のルールについて見てみる。
 まず、20人以上の労働者を有する事業所では文書による労働協約を持たなければならず、それがない場合は就業規則が労働協約とみなされることになっている(法10条)
労働協約の制定、改正については労使双方から文書による要求書を相手に出す必要がある(法13条)。就業規則にない問題でも労働者側からの様々な要求は文書により要求書として使用者側に提出しなければならないことはいうまでもない。

(2)労働者側の要求書の成立要件(労働者が出す場合)
この要求書を労働者側が提出する場合、要求書に関係する労働者の15%以上の氏名、署名が要求書に記載されなければならない。労働者側が協議のための代表を選出している場合は、7名以内の氏名を要求書に記載しなければならない(法13条3項)。選出していない場合は、労働者側は直ちに7名以内の代表を選出しなければならない。
この代表の選出方法については省令で定められている。

(3)労働者側の要求書の成立要件(労働組合が出す場合)
 要求書を労働組合が労働者に代わって提出することができるが、その場合、労働組合員の人数は全労働者の5分の1以上でなければならない(法15条1項)。また、要求書に関係する労働者の氏名、署名を要求書に記載する必要はない(法15条2項)。
 労働組合が全労働者の5分の1以上を占めているかについて、使用者側に疑義がある場合、使用者側は調停官に対して調査し、証明することを書面により請求することができ、調停官は請求を受けた場合、調査し条件を満たしていた場合証明書を発行、満たしていない場合はその旨通知することになっている(法15条3項)。

(4)要求書の協議が合意した場合(労働者が出した場合)
 合意事項は文書にして、使用者側と労働者側代表(7名以内)が署名、合意の日から3日以内に30日以上公示しなければならない(法18条1項)。合意書は合意の日から15日以内に労働事務所に提出し登録しなければならない(法18条2項)。
 この合意は使用者と要求書に署名した労働者を拘束するほか、代表選挙に参加した労働者も拘束する。

(5)要求書の協議が合意した場合(労働組合が出した場合)
 合意事項は文書にして、使用者側と労働組合役員が署名、上記(4)と同様の手続きをとる(法18条)。
 この合意は、労働組合にもし全労働者の3分の2以上が加入していた場合は、使用者と全労働者を拘束する(法19条2項)。ここは一寸分かりにくい条項である。労働組合が出す要求書の成立要件は、全従業員の5分の1以上が組合員であることで充分であったが、合意については3分の2以上が加入している場合にのみ全従業員を拘束するのである。そうなると、組合員が5分の1で合意した場合は、組合員しか拘束しないということになり、非組合員は拘束しないと解される。
 これを、日本の例でみると「労働組合法」では(そもそも「労働協約」なる言葉は、日本では使用者と労働組合との間の合意を指す)、17条において全労働者の4分の3以上が組合員である場合、非組合員にも適用されると定めている。ただし、日本では非組合員に拡張適用される部分は待遇に関する部分であると一般的に解されており、そのような判例もある。
 タイの場合、5分の1というのは少数者の組合であり、合意事項をそのまま全員に適用するには無理があり、3分の2としたものであろう。ただ、日本の例と同様、賃上げなど労働者側に有利な待遇に関する合意を、組合員だけに適用するというのは実際問題として無理があり、日本と同様非組合員にも適用するのが問題のないやり方と思われる。

労働組合運動に対する不当労働行為の禁止
以下のことは禁止されている。
(1)労働組合員であることを理由に解雇すること(法121条2項)
(2)労働者もしくは労働組合が組合活動をしていることによる解雇、妨害(法121条1項)
(3)組合への入会を妨害、脱退させること、そのため労働者に金銭を与えること(法121条3項)
(4)組合の運営を妨害することは(法121条4項)
(5)組合の運営に干渉すること(法121条5項)

以上

 

 

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