icon-anchor タイの外資政策

1:外国人事業法(製造業は原則規制なし)

1960年代まで、タイの外資政策、つまり外国人または外資マジョリティである企業のタイでの事業について規制を加えていたのは、もっぱら投資委員会(Board of Investment-BOI)の外資政策であった。しかし、1970年代初頭、国際、国内の事情により外国人が営む事業を現制する動きが高まり、1972年の軍事政権下、革命団布告として、いわゆる外国人事業法が公布された。

この法律は、タイの経済が1997年に始まった経済危機に直面したあと、99年に改正され、2000年3月から新しい法律として外国人事業法が施行された。

一方、第2章で述べるようにBOIの外資政策は原則自由化されている。その中には一部サービス業も入っているので、サービス業は全てが外資マジョリティの参入を規制している訳ではないことに注意されたい。BOIが100%外資でも認可するサービス業にはどういうものがあるかは付録の「BOI奨励対象業種表」を参照のこと。

また、下記の規制業種を見て分かるように製造業は原則本法による規制の対象にはなっていないことにも注意されたい。

1999年の外国人事業業法改正では、従来と大きく異なることはなく、農業、伝統工芸などは外国人の参入は従来通り認めないが、従来規制されていた小売、卸売、仲介、建設業が条件つきで認められるようになっている。

この法律による外国人の定義の以下の通りである(4条)

1.タイ国籍のない自然人

2.外国の法律により設立された法人

3.タイ国の法律で設立されたが、以下のもの

(1)資本金の2分の1以上が1.または2によって保有されている法人

(逆に、タイ人の持分が50%超であればタイ人となるので、サービス業で外国人事業委員会の認可が得られない場合、タイ人の持分を51%以上とすることはよく行われている)

(2)有限または普通パートナーシップの社員または代表社員がタイ国籍者でない場合

4.タイ国の法律で設立された法人であるが、資本金の2分の1以上が1.2.または3.によって保有される法人

 

2: 外国人事業法の規制業種(生産的事業は規制対象外)

本法では、業種を3種に分けて以下のように規制している。

別表1 特別の理由により外国人が営むことのできない業種

1.新聞、ラジオ放送、テレビ放送事業

2.稲作、畑作、園芸

3.家畜飼育

4.営林および自然林の木材加工

5.タイ国の領海、経済水域での漁業

6.タイ薬草からの抽出

7.タイの古美術品などの販売、競売

8.仏像および鉢の製造

9.土地の売買

別表2 国家の安全、または伝統芸術、天然資源、環境に影響を与える事業、これは閣議の了承に基づき商務大臣が許可することになっている,

1類:国の安全に関するもの

1.武器の製造販売

2.国内の陸上、水上、航空輸送

2類:伝統、芸術、地方工芸に影響を与えるもの

1.古物、美術品すなわちタイ国の芸術、工芸品の取引

2.木製彫刻の製造

3.養蚕、タイシルクの製造、タイシルクの織物またはタイシルク布の捺染

4.タイ楽器の製造

5.金製品、銀製品、細工品、象眼金製品、漆器の製造

6.タイの伝統工芸である椀、皿または陶磁器の製造

 3類:天然資源または環境に影響を与える事業

1.砂糖きびからの製糖

2.塩田での製塩

3.岩塩からの製塩

4.爆破による砕石を含む鉱業

5.家具、道具を製造するための木材加工

別表3 外国人との競争力がまだついていない事業

外国人事業委員会(後述)の了承により、タイ人の持分が50%未満であれば商務省商業発展局長が許可する。

1.精米、米および穀物からの製粉

2.養魚

3.植林

4.合板、ベニヤ板、チッブボード、ハードボードの製造

5.石灰の製造

6.会計サービス

7.法律サービス

8.建築サービス

9.エンジニアリングサービス

10.建設、以下を除く

1)特別の機器、機械、専門性を要する公共施設または通信運輸に関する基礎的なサービスを国民に提供する建設業で外国人の最低資本金が5億バーツ以上のもの

2)省令で定めるその他の建設業

11.次を除く仲買業、代理業

1)証券売買仲介、代理業、農産物または金融証券の先物取引

2)同一企業内における製造に必要な売買、商品発掘の仲介、代理、または、製造に必要なサービス、技術サービス

3)外国人の最低資本金額が1億バ-ツで、タイ国内で製造されたか外国から輸入された製品を売買するための仲介または代理業、国内、国外の市場開拓、販売業

4)省令で定めるその他の仲介、代理業

12.次を除く競売業

1)タイの美術、工芸、遺物で、タイ国の歴史的価値のある古美術品、または

美術品の国際的入札による競売

2)省令で定めるその他の競売

13.法律で禁止されていない地場農産物の国内取引

14.全てを含む最低資本金額が1億バーツ未満、または1店舗当たりの最低資本金額が2千万バーツ未満の全商品の小売業

15.1店舗当たりの最低資本金額が1億パーツ未満の全商品の卸売業

16.広告業

17.ホテル業、ただしホテルに対するサービスを除く

18.観光業

19.飲食店

20.種苗、育種業

21.その他のサービス業、ただし、省令で定める業種を除く

 

別表3については、外国人事業委員会の了承により商業発展局長が許可できることになっている。

 

サービス業でも技術レベルを高めるなど、国家にとって有益であれば認められるケースもあるので、BOIの奨励対象となっていないものも、BOIと先ず相談し、BOIの認可が得られない場合は、安易にタイの資本を51%入れる前に、まず、外国人事業法委員会の事務局とも相談してみることである。

 

3:外国人事業委員会(事業認可と規制業種の見直し)

本法では「外国人事業委員会」を設置、委員長は商務省次官で、その任務は概ね次の通りである(26条)、

1.省令、勅令発布に際し大臣へ具申すること

2.年に一回以に外国人の事業について調査報告し、大臣へ提出すること.

3.その他の意見を大臣へ提出すること.

委員会の責務として、年に1回以上業種を見直すことになっているが(9条)、現在までまだ見直しは行われていない。

旧法でも似たような規定であったが、委員の構成が変わっている。旧法では、委員

長は新法と同様商務省次官で、委員は工業省次官、外務省次官、国家社会経済開発委員会事務局長務局長、国家安全委員会事務局長、投資委員会事務局長、労働局長、国内商業局長、商業発展局長であった。

新法では、これがかなり拡大されていることである.官庁は次官、局長ではなく代表と表現してあるが、局長以上が要求されている.官庁では大蔵省、農業・協同組合省、運輸通信省、内務省(旧法の労働局長は内務省に属していた)、科学・技術・環境者、教育者、厚生省、消費者保護委員会、国家警察事務局が加わったほか、旧法にはなかった民間代表であるタイ国商業会議所、タイ国産業連盟、タイ国銀行協会(いずれも理事以上)が加わり、更に商務大臣が任命する学識経験者5名以内が加えられている

 

4:節 タイ人の名義借りについて(罰則は重くなった)

旧法で行われていた抜け道に、外国人に規制された事業を営む際、タイ側の持ち分が51バーセントであればタイ企業扱いとなり自由に営むことができるところから、タイ人の名義を借りてタイ国籍者に株を持たせ、実質的には外国人が全額出資、規制事業を許可なく営むという方法であった。これは旧法でも新法でも違反として明示してあるが、旧法では罰金3万パーツから50万パーツであった。しかし、新法では、3年以下の懲役もしくは10万パーツから100万バ-ツの罰金、または、両方の併科と非常に重くなっている(36条)。

実は、タクシン前首相が私的にこの方法を使ったという嫌疑がかけられ、政治問題となり、2006年に革命が起きたのであるが、臨時政権ではこの法律を改正し、株式持分がタイ人51%でも実質的に外国人が支配している企業は外国人とするという法案が出されたが、一旦は暫定国会に上程されたものの、外国人投資家へ悪影響を及ぼすということで取り下げられた経緯がある。

ただし、会社登記の段階で名義借りを防止する目的で、商務省商業発展局中央登記局の登記規則が2006年7月20日に出ている(同年8月2日官報公布)。それによると、株式会社とパートナーシップの外国人の持分が40%から50%未満である場合、または、外国人の持分が40%未満であるが外国人が支配権を持っている場合、登記の際タイ国籍者の株主または社員は全員6ヶ月遡った銀行預金の記録、もしくは、本人の資金に関する銀行の証明書、もしくは、投資した金額に関する証明を提出しなければならないことになっている。

 

5:駐在員事務所(営業活動はできない)

 駐在員事務所も外国人事業法委員会の認可を要するが、同事務局の資料によると駐在員事務所は以下の事業に限られていて、本社の売買契約にタッチするなどの営業行為はできない。

(1)駐在員事務所の事業の範囲

1)本社に対して、タイ国内での商品、サービス調達先を探すこと

2)本社がタイ国内で発注し、生産を委託した商品の品質と量の検査、管理を行うこと

3)本社が代理店またはユーザーへ販売した商品に関する様々な助言を与えること

4)本社の新製品、新サービスに対する情報を広報すること

5)本社に対してタイ国内のビジネス情勢を報告すること

(2)条件

1)外国の法律で設立された法人であること

2)サービスから収入を得ないこと

3)いかなる者とも購買発注、販売引合の申込、ビジネス交渉を行うことはできない

4)事業に必要な経費は本社から支援を受けること

5)会計法に従い財務諸表を揃えること

設立の申請は商務省のDepartment of Business Development へ提出すること

2016年11月28日  元田時男