「会社からの借金を給与から天引きできる限度」

Q:福祉の一環として従業員にお金を貸し付けることが多くなってきています。それを給与からどれだけ天引きできるかというのが今回のテーマです。

A:労働者保護法を見てみましょう。法76条では例外を除き賃金、時間外手当、休日勤務手当、休日時間外手当から天引きしてはならないと規定しています。つまり、給与は全額支給が原則であります。

それでは例外は何かでありますが、76条では次の5項目について例外を設けています。
(1)個人所得税の源泉徴収、その他の法に基づくもの(社会保険など)
(2)労働組合費
(3)貯蓄組合、同様の協同組合、厚生資金などへの納付金
(4)法で認められた保証金(経理担当者など)。また、故意、重大な過失により生じた使用者に対する損害賠償金
(5)プロビデントファンドの拠出金

以上のうち(3)と(4)については労働者の同意が必要であります。また、(2)、(3)、(4)、(5)についてはそれぞれ労働者が受けとる権利のある金額の10%を超えてはならず、かつ、合計で20%を超えてはならない、ただし、労働者の同意を得た場合を除くと規定されています。

ここで、労働者の同意とは77条で文書により労働者の署名を得なければならないと定められています。

以上の賃金、手当て等の20%を超えてはならないという原則は、給与から余り多額に天引きすれば労働者の生活に大きく影響するという配慮でありましょう。

そうすると、自ずから貸付の限度額は決まってきます。また、労働者が借金の返済が済まないうちに辞職、解雇されたときどうするかも考えておかねばなりません。そのことを充分考慮した上で共済組合、厚生資金などの規則を作成し、貸付額に一定の歯止めをかけておかねばならないことになります。

また、返済について労働者から文書に署名した同意書を取り付けておくことが必要となります。

なお、判例では、解雇補償金、事前通告に代わる補償金、解雇のとき支払わなければならない(労働者に非違行為がなく解雇するとき)取得しなかった年次有給休暇の賃金から天引きする合意は合法としています(最高裁判決5779/2541ゲーソムサン・ウイラワン著「労働法解説」2005年より)。

以上

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