タイにおける公証制度(Notary Public)について

タイにおける公証制度(Notary Public)について

スパット サコンチャイ 弁護士(タイ国)

公証人とは、「署名の認証、各種書類の記載内容が真実であることの認証、または宣誓認証を行う人」を指します。

先進国を中心とした世界の多くの国々、例えばアメリカ、イギリス、日本、中国、さらにはミャンマーにおいても、公証人の義務権限および資格等を定めた法律が制定されています。公証人の資格については各国により異なりますが、原則として公証人には信頼性および知識が求められ、法的行為において国民に便宜を図ることを主目的とすることに変わりはありません。この点、残念なことにタイでは未だ公証制度の設置を規定する法律が制定されていません。

タイ国内においては、公証制度に代わる認証の方法として、実務的には現在も信頼性のある機関としてタイの政府機関(外務省領事局法務部)により同様のサービスが提供されています。

ただし、外務省領事局法務部のサービスはバンコク都内においてのみ実施されており、他県ではこれらのサービスは提供されていません。この点、外国の公証制度においては、国内の多くの場所でサービスを利用できるため、その国の国民にとって便利かつ金銭面の負担も少ない制度となっています。

タイにおける公証制度の必要性はこれまでも長年にわたり論じられてきましたが、その度に外務省は反対の立場を取り続けてきました。歴代政府も外務省が業務として行っている作業を第三者に行わせることに消極的であったため、公証制度にかかる法律案が国会に提出されることはありませんでした。その後、タイ弁護士会により弁護士の収入拡大を目的として、弁護士法に基づく公証サービスの提供が可能であるとする見解が出され、「仏暦2551年 署名および文書認証を行う弁護士の登録にかかる弁護士会規則」が制定されました。関連の規定も整備され、弁護士向けの育成研修が実施されるようになりました。これにより研修を修了した弁護士は、署名および文書認証を行う弁護士として登録すれば、弁護士会の公証業務対応弁護士(Notarial Services Attorney)として業務を行うことが可能となりました。それから現在まで、一部弁護士事務所や法律事務所では対応業務として公証業務を掲げています。

タイの政府機関では一般的に、政府機関に対する法律行為である申請書や要求書の提出において、それがアメリカ政府発行の無犯罪証明書のような外国の文書である場合、タイ政府の職員は文書の提出者にタイ国内のアメリカ大使館または領事部で認証を受けるように指示します。認証を受けた文書はその後さらにタイの外務省領事局法務部において署名認証を受ける工程が必要となります。一方で、外国で発行された文書に当該国のタイ大使館または領事部による認証が付されている場合、タイ政府機関はそのまま(またはタイ外務省領事局法務部の再認証の上で)受理します。これはタイ政府が同じタイ政府機関による認証のみを認めていることによります。

タイ弁護士会の公証業務対応弁護士による署名または文書の認証は、外国で使用する場合にのみその効力が認められます。これは、外国における文書認証の原則が文書認証者の信頼性に依拠しているためで、外国で文書を受理する側が、登録者番号および住所の記載により、文書認証がタイ弁護士会所属弁護士により行われていることを確認すれば、当該の認証は通用します。さらに書類を受理した外国の政府機関または民間機関は、タイでも各国同様の公証制度が法律で規定されているものと理解します。

なお、外国に提出された書類の一部については、疑問が生じた際にタイ国内の書類認証者である弁護士に対し問い合わせが行われていますが、弁護士から事情説明を行うことでそれらの書類はスムーズに受理されています。

結論として、タイにおける公証制度には2種類の方法があります。(1)タイ政府つまりタイ外務省領事局法務部による認証、(2)タイ弁護士会の公証業務対応弁護士による認証(政府機関ではない、タイ弁護士会が仏暦2528年弁護士法に基づき設立)。

確かに信頼性の面でいえば、タイ政府による認証の方が信頼性は高いといえましょう。また、タイ国内および国外の両方で使用することが可能です。一方で弁護士による認証は一般的に外国でのみ使用が可能ですが、国内のいたるところでサービスが提供されているため利用しやすい点は長所として挙げられます。

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