ニュース 16号 (190810)

SME MULTI CONSULTANT ニュース 16号(190810)

タイの法令の新しい話題を簡潔にまとめ、月一回のペースで送信いたします。(西暦 = 仏暦 − 543)

1.外資商社、BOIなしでも国際取引可能?:

 

仏暦2542年外国人事業法別表3により、外資50%以上の商社は、払込済み資本金1億バーツ以上(かつ1店舗あたり2千万バーツ以上)で小売業ができます。それとは別に資本金1億バーツ以上で卸売業ができます。

一方、資本金1千万バーツ以上でBOIのITC認可を取得してタイ国内卸売(小売りはダメ)・輸出入取引・三国間貿易している日系企業も多数あります。しかしながら、このITC制度は2018年12月に新規申請受付が終了、代わりにIBC制度としてスタートしています。詳しくはSME MULTI CONSULTANTニュース12号をご参照下さい。

 

ニュース12号

1.(BOIの看板ライセンス)ITCとIHQが統合されてIBCに(投資委員会告示第Ngor.1/2561号、投資委員会告示第Sor.6/2561号): 

2015年BOI(タイ国投資委員会)政策下で施行され、(製造業の販売サービス部門を含む)商社系日系企業に大人気(180930現在の認可数475案件)だったITC(7.6 International Trading Centers: 国際貿易センター)ライセンスは、昨年暮れ(181211)に予告なく発給が停止され、(同時に発給が停止された)IHQ(7.5 International Head Quarters: 国際地域統括本部)と統合された形のIBC(7.34 International Business Centers: 国際ビジネスセンター)となって発給が開始されました。この点、181210までに申請済み案件に対してはITC(IHQ)がそのまま適用され、181211以降の申請案件からIBCが適用されます。今後のIBC(旧ITC)申請希望事業者にとっては、下記のとおり、従来のITCよりもハードルが高くなります(資本金枠は1,000万バーツのままです)。

① 旧ITC業務を前提とし、下記の10項目のうち、少なくとも1項目を追加しなければならないこと。

1.1 グループ会社向け一般管理、事業計画立案、事業活動上の連絡調整
1.2 グループ会社向け材料・部品の調達 ← 輸出を前提とした輸入税免税特典は付与されない。
1.3 グループ会社向け製品の研究開発
1.4 グループ会社向け技術支援
1.5 グループ会社向けマーケティング・販売促進
1.6 グループ会社向け人事労務管理・技能研修訓練
1.7 グループ会社向け財務面のアドバイス
1.8 グループ会社向け経済・投資面の分析・研究
1.9 グループ会社向け与信管理・統制
1.10 グループ会社向け外貨資金管理(Treasury Center) ← タイ中央銀行

ご覧のとおり、IBCでは申請資格要件のハードルがITCより少し高くなりましたが、貿易戦争・為替戦争の時代を生きる日系商社・メーカーの商社部門にとって、アセアン内の取引拠点構築のための魅力的な制度であることは間違いないでしょう。

さて、本稿では視点を変えて、外資半数以上の商社(例:日本独資の場合)がBOIのIBCを取らなくてもできることはあるのか?考えてみました。その結果、このたび商務省事業活動開発局からとても興味深いルーリングレターを2019年7月に取得しましたので下記のとおりご紹介いたします。

「前文省略・・。現在甲社は、**部品を調達し、外国の顧客に販売することを希望しています。上記の部品は、

      1. タイ国内メーカーより調達し輸出する(In-Out)、
      2. A国のメーカーより調達し、(商品はタイ国を経由せず)B国の顧客に直接運送される(代金決済はタイ国を経由する)三国間貿易(Out-Out)。

この形態の事業は、外国人事業法に基づく許可申請を必要とする事業に該当するか否かという照会がありました。

外国人事業管理部は検討の結果、下記の通り回答します。上記の**部品を調達し、外国の顧客に販売する事業は、仏暦2542年外国人事業法に該当しないため、会社は許可申請を行う必要なく、事業を運営することが可能です。なお、外国人事業法第14条1段に基づき、外国人たる法人が外国人事業法に該当しない事業を行う場合、2,000,000バーツ以上の最低資本金を持たなければなりません。ただし、他の法律が定める資本金は別枠です。・・以下省略」。

このように、「IBCを取らなくても、タイからの輸出業とタイを拠点とする三国間貿易だけなら日本独資で事業化可能である」ことが明らかになりました(タイからの輸出規制品目や国際条約による規制品目については別途要検討ですが・・)。

以上です(上記は作成した時点でのご参考情報です。実際の運用の際は再度ご確認のほどお願いいたします。なお、西暦 = 仏暦 – 543です)


御社のご盛業を!日タイ経済産業連携と両国の永続的な友好関係を祈念して!

SME MULTI CONSULTANT CO., LTD.

川島和士 (KAZUSHI KAWASHIMA)