タイの輸出入規制の概要

タイの輸出入規制の概要

2021年2月5日元田時男

1.1979年輸出入法(最新改正2015年))による規制

 1979年輸出入法第5条により商務大臣は閣議了承により、必要な場合輸出入を規制することができるようになっている。

 その一覧表は担当の商務省Department of Foreign Tradeのウエブサイトで一覧表にして発表されている。閲覧するときは、上記の英語の局名で検索し、タイ語は英語に翻訳できるようになっているので、Measures Related to Import and Export で検索するとImport-Export Procedures という表題の英語の一覧表が出てくる。

 この一覧表で主要輸入禁止品目を見てみると、50cc以下の二輪車の中古エンジン、パーツ、アクセサリがあり、禁止理由として人間の健康、環境保全となっている。ほかゲーム機、製造過程でCFCを使用した家庭用冷蔵冷凍庫、など7品目が指定されている。

 輸入ライセンスが要るものとしては、中古自動車も種類が分かれている。中古オートバイ、中古ディーゼルエンジン、プラスチック屑など全部で17品目が指定されている。

 あと、輸入では農産物など特殊なものなど、輸出規制があるものなどが列挙されている。

 具体的に興味のある向きには、このリストをウェブサイトからプリントして正確な情報を得られるようお勧めする。このリストにある品目のほとんどの担当はDepartment of Foreign Tradeであるほか、後述の特別法(食品法、薬事法、医療機械法)による規制を含めて保健省のFood and Drug Administration(FDA,)が担当するものもある。

2.特別法による輸入許可

 そのほかに特別法により輸入が規制されているものもあるので、(1)以下を参照のこと。

(1)食品法による輸入許可

 1979年食品法15条により、食品の輸入、製造、販売には保健省のFood and Drug Administration(FDA)の許可を受けなければならない。

 後述のFDA関係品目も含めて、FDAでは後述の薬事法など関係分野(についての照会に回答するワンストップサービススセンターを、保健省内に設けているので、詳細な情報が得られるようになっている。

(2)薬事法による輸入許可

 1967年薬事法の12条により、医薬品の輸入、製造、販売は上記FDAの許可を受けなければならない。

(3)医療機器法による事業者登録

 2019年医療機器法(1988年法を改訂)の17条により、製造、輸入する者は事業所をFDAに登録し、許可を受けなければならない。

(4)化粧品法による輸入許可

 2015年化粧品法(1974年法を改訂)の14条により、化粧品の製造、輸入はFDAの許可を受けなければならない。

(5)計量法による輸入許可

 1999年計量法(1923年法を改訂)の34条により、計量器の輸入には商務省計量事務所の許可を受けなければならない。計量機器は精密を要する日系企業にとって重要な役割を果たす機器であるが、小さなものが多くあり、ハンドキャリーで許可なし、通関もしないで持込み、工場で発見されて罰された事例もあるので気をつけたい。

(6)工業規格法による輸入許可

 1968年工業規格法に基づく工業規格の122数品目(2021年1月22日現在)については、強制的に工業規格に従わなければならない品目として指定されている。この指定品目を輸入する場合、同法20条により検査官の検査を受け、工業規格委員会の許可を受けなければならない。 実務機関の(Thai Industrial Standard Institution(TISI)のホームページを英語の機関名で検索すると、指定品目の英文リストが出てくるので、自社の関心品目があるかチェックされたい。

(7)危険物資法による輸出入規制(バーゼル条約との関連)

 1992年危険物資法は1967年毒物法を廃止して新しく制定された法で所管は工業省工場局(Department of Industrial Works-DIW)である。本法の第4条で引火物、爆発物、毒物などの⒑の区分による物質が危険物質と指定されている。そして、それを危険の度合いにより第1種から第4種まで第18条で以下のように区分している。

第1種 生産、輸出入、保管は基準に従うこと

第2種 生産、輸出入、保管は担当官に事前に通知し、基準と手続きに従うこと

第3種 生産、輸出入、保管は許可をうけること

第4種 生産、輸出入、輸送、保管が禁じられている

危険物資法にある物資に有害廃棄物を加えて、工業省(DIW)が輸出入のほか、産業廃棄物、処理、産業廃棄物の輸入(特に中古電気製品、部品、電気製品のくず、廃プラスチック)についてもDIWがこの法律、および工場法に基づく省令、規則で輸入を規制している。DIW Thailandで検索すると規制されている有害物質等のリストがタイ語英語でリストアップされている

有害廃棄物の輸出入に関する略称バーゼル条約「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約」(Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal:1992年発効)日本もタイも加盟国である。事務局はスイスにある。この条約による国内措置としてタイも様々な規制を実施しているのである。

この条約の原文、そのうち英語については、Basel Conventionで検索すると出てくるのでご関心の向きは原文に当たられたい。

(おわり)