退職積立基金 (プロビデント・ファンド、กองทุนสำรองเลี้ยงชีพ)の概要

退職積立基金
(プロビデント・ファンド、กองทุนสำรองเลี้ยงชีพ)の概要

2020年12月6日 元田時男

.はじめに

 プロビデント・ファンドは第5次経済社会発展5か年年計画(1982-1986年)で奨励された。その後1987年に正式に法律化されたもので、従業員の退職時の資金確保、従業員の定着率を高めるための重要な役割を果たしてきている。

 また、担当官庁も、この法律が1999年に大幅に改正され、2000年から実施主体が財務省からタイ国証券取引委員会(SEC)へ移されている。

 以下、この制度のあらましについて述べる。

 職員の数には関係なく(複数の企業が合同して運営することもできる)、職員の将来の福祉のため、加入が強制されている社会保険を補完するものとして、職員との合意により設立されるこの基金の設立を検討されたら如何かと思う次第である。政府もこの制度が普及することを願って税法上も優遇策を設けているのである。

目的、基金への拠出と税法上の扱い 

 第5条において従業員の退職時、死亡時、基金脱退時に支給されることを目的としており、基金へは使用者と従業員双方が拠出することになっている(第7条)。拠出金は最小で賃金の2%、最大で賃金の15%で使用者は従業員の拠出金以上を拠出することが定められている(第10条)。また労使が合意して財務大臣が許可すればそれ以上を拠出することも認められている(10条2項)。

ちなみに、使用者が基金へ拠出する金額については、国税法典65の3条の(2)において損金算入が認められている。ただし、財務省令183号に従わなければならない。

また、従業員が拠出する分については国税法典第47条(1)の(g)により年間1万バーツまでは所得控除が可能であるほか、1万バーツを超える分については、大蔵省令126号第2項の(35)により賃金の15%を超えない範囲で最高49万バーツ(2008年1

月1日からこの金額に増額)までが免税となっているので、最高50万バーツまで所得控除が可能と同様の効果が与えられている。

なぜ、所得控除と免税に分かれているかであるが、所得控除の改正は国税法典の改正となり国会を通さなくてはならないが、免税分は財務省令の変更であるから臨機応変に変更が可能であるからである。

基金の設立、規則

基金は使用者と従業員が話し合いで設置するものであるが(第5条)、合意に達し、基金の規則が法にかなえば、登記官は登記して法人とすることになっている(7条)。また、官報で公告されることになっている(第8条)。登記官は財務大臣が任命するが(第3条)、現在ではタイ国証券取引委員会の事務局長となっている。

 基金の規則は登記を要し、概要以下の事項を盛り込むことが規定されている(第9条)。

(1)名称:退職基金****登記済みと付す
(2)事務局所在地
(3)目的
(4)入会、退会規則
(5)役員人数、選挙、選任方法、役員会議など
(6)従業員の拠出金および使用者の拠出金に関する事項
(7)従業員が受領する便益計算の基準
(8)会員(職員)が退会するとき、または29条による基金解散の場合の基金払い戻しの基準、手続き、期間に関する条項。ただし、正当性を欠いて、職員の権利を侵しはならない。
(9)基金運営に要する経費に関する基準
(10)総会に関する規則、または、基金運用の方針決定に関する総会に関する運用
(11)省令で定めるその他の事項

 変更は、変更の承認の日から15日以内に登記を要する(9条2項)

基金委員会と登記官

従業員の選挙により選ばれた委員と、使用者が選任した委員で構成され、基金の運営に当たり、基金を実際に運用する基金支配人(ファンド・マネジャー)の選任をすることになっている(11条)。

 登記官は以下の権限を持つ

(1)ファンド・マネジャーが基金に損害を与える恐れがあるとき、改善命令を出すか、マネジャーを解任することができる(12の2条)。

(2)毎年2回大臣に対して基金の監督状況について報告しなければならない(12の3条)。

基金の運用

 基金の運用するファンドマネージャーは、使用者ではなく、証券および証券取引所に関する法律に基づく民間基金の運用に関する証券業の許可を受けた者がなさなければならない(13条)

 これについては,1993年財務省令2号(最終改正2000年)により投資会社、証券会社、銀行、生命保険会社が基金をマネージすることができることになっている。

また、運用の方法については、上記財務省令2号で、国債、転換社債、国債、株式など安全で有利な方法が定められている。

ファンド・マネジャーは以下の場合には、契約の継続中であってもファンド・マネジャーであることを停止しなければならない。

(1)登記官が第12条により資格を取消したとき
(2)ファンド・マネジャーとしての資格を喪失したとき
(3)基金とファンド・マネジャー間の契約が破棄されたとき
(4)基金が解散したとき

 基金の会計、資産の帳簿は、使用者のものと区分しなければならない(第15条)。

基金からの給付と個人所得税

 従業員が基金から脱退するとき、脱退の日から30日以内に、ファンド・マネジャーは基金の規則に従い1回で全てを基金から払い戻ししなければならない(23条1項)。死亡による脱退についても詳細が定められている。

(1)職員が離職、死亡、障害者になって退職する場合、死亡したときの給付金は、財務省令126号第2項の(36)により免税となるが、その条件は所得税に関する国税局長告示223号で以下のように定められている。

  1)ファンドの規定により定年になったときは55未満であってはならない。かつ、5年以上加入していること
  2)障害者になったときは、登録医師の証明を必要とする。
  3)死亡したときは、死亡証明を必要とする。

 この際免税となるのは、本人の拠出金とそれに対する運用益、企業の拠出金とそれに対する運用益が対象となるが、その詳細は、ファンド・マネージャー、会計事務所等に相談すること。

基金の解散

 第25条で以下のように定められている。

(1)使用者が事業を止めたとき
(2)総会で解散の決議をしたとき
(3)基金の規則に解散の規定があるとき
(4)登記官が27条により解散を命じたとき

 また、(1)から(3)までの事態が発生したとき、基金委員会は解散から7日以内に登記官に対して報告をし、かつ、解散から内に清算を開始し、150日以内に清算を完了しなければならない(第26条)。登記官は基金の解散を官報に告示し、基金の事務所または登記官の事務所において公示しなけれ30日以ばならない(第28条)。

 清算事務は、民商法典のパートナーシップと株式会社の規定によらなければならない(第29条)。

 清算の途中で清算人が適当と認めた場合、事前に一部を従業員に払い戻すことができ、全部については、精算完了に日から30日以内に払い戻さなければならない(第29条2項)。

.罰則

 主なものを挙げると以下のようなものがある

(1)ファンド・マネジャーが基金に損害を与えるような事態になり、登記官が是正を命  
   令したとき従わない場合、または従業員が会員であることを終了した場合、規則に
   従い払い戻しをしないとき、5万バーツ以下の罰金(第35条)。

(2)登記官または担当官の命令に従わず、違反し、立ち入り検査に便宜を与えない場合、
  5千バーツ以下の罰金(第40条)。

参考、参照資料

1.タイ国法制審議会事務局(สำนักงานคณะกรรมการกฤษฎีกา)法令データベース

2.国税法典2563完全2020年版ประมวลรัษฎากรฉบับสมบูรณ์2563 DHARMNITI ACCOUNTING and TAX CO.,LTD.