タイ国税法典に基づく印紙税: 事業者が知っておくべき実務ポイント
スパット サコンチャイ弁護士(タイ国)
印紙税の納税義務者
一般的に、有価証券により利益を受ける者が印紙税の負担義務を負います。例えば、借主、賃借人、受任者、または領収書発行法人などです。ただし、当事者間でどちらの側が印紙税を負担するかを合意することも可能です。印紙税は、有価証券を作成した日から15日以内、またはその有価証券を外国で作成した場合には受領日から30日以内に正しく納付しなければなりません(国税法典第111条)。この期限に従わなかった場合、不足した印紙税額に対して最大6倍の追徴金を課される可能性があります。なお、課税される印紙税の税率は、下表の通り有価証券の種類によって異なります。
契約書の種類 | 税率 |
---|---|
金銭消費貸借契約 | 借入金2,000バーツごとに1バーツ(ただし、印紙税額が10,000バーツを超える場合は、10,000バーツを上限とする。) |
請負契約 | 契約書に定められた報酬1,000バーツごとに1バーツ(最低1バーツ以上) |
不動産賃貸借契約 | 賃料1,000バーツごとに1バーツ(契約期間全体の賃料額に基づく。ただし最長3年分まで) |
印紙税の納付方法
印紙税の納付は、以下の方法で行うことができます。
1. 契約金額が100万バーツ未満の場合
紙の印紙を購入し、有価証券(金銭消費貸借契約、不動産賃貸借契約、請負契約など)に貼付します。請負契約について、正式な契約書を作成していない場合は、注文書(P/O)の正本で双方が署名したもの、または注文書・請求書などのやり取りの文書に印紙を貼付します。印紙を貼った後は、印紙の上に抹消線を付します。
2. 契約金額が100万バーツ以上の場合
国税局事務所において現金で納付します。(この場合、紙の印紙は使用しません)申請書(Or.Sor.4様式) に契約書の正本と副本を付して提出します。納付後、領収書や支払証明書を契約書に添付します。
3. オンラインによる納付(e-Stamp Duty)
電子文書に対する印紙税の納付、または紙の印紙の貼付を希望しない場合にオンラインによる納付が可能です。納付後、電子領収書(e-Receipt)をダウンロードまたは保存し、該当文書に添付して証拠とします。
事業者に対する助言
- 各有価証券について印紙税の課税対象となるか確認する。
- 組織内で印紙税の管理・手続き担当者を定める。
- 正しい理解および実務方針について会計部門・法務部門に対し研修を行う。
- オンラインで取引を行う場合はオンラインによる納付システム e-Stamp Duty を利用する。
- 印紙税納付の証拠を体系的に保管する。
印紙税は、書類上の軽微な手続きのように見えるかもしれませんが、企業にとっては適切かつ厳密に管理することで、法的および税務上のリスクを軽減することに貢献します。現在、国税局は各種有価証券における印紙税の納付状況をより厳格に調査し始めており、特に付加価値税、源泉徴収税、過納税などの還付申請を行う際には、その確認が重視されています。