icon-anchor 就業規則作成上の留意事項について

1.はじめに
就業規則は企業が操業開始前には作成するのが通常であり、労働者保護法では108条において、10名以上の労働者を使用する使用者は、タイ語で就業規則を作成、10名以上となった日から15日以内に、公布すると同時に公布から7日以内に写しを労働事務所へ提出しなければならないと定められている。これを怠った場合、使用者は2万バーツ以下の罰金であるから注意を要する。もちろん10名にならない小さな事務所でも、口頭による指示だけでは徹底しないし、もめの元となることを考えると、当然ながら作成しておいた方が無難であろう。
また、日本人責任者が交代で赴任する場合は、必ず労働法と就業規則、その他の労使協定には目を通して、まさかに備えることが肝要である。何かが起きて慌てて就業規則を紐解くようでは、労働者側から軽んじられることになりかねないのである。
更に、労働者保護法108条3項では、労働官は法に抵触する規則を一定期間内に修正するように命令する権限を有しているのであるから、規則の作成、修正に当っては公布する前に労働事務所へ提出して法的に問題ないか確認することが好ましい。
労働者保護法は以下単に「法」と呼ぶこととする。

2.就業規則の法定記載事項
法108条において以下は必ず記載しなければならない。
(1)労働日、通常労働時間および休憩時間(注:労働日は使用者が毎年のカレンダーにより定めるのが通常であるから、規則ではそのようにうたっておくのが通常)
(2)休日および休日に関する原則
(3)時間外労働および休日労働に関する原則
(4)賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支給日および支給場所
(5)休暇日および休暇に関する原則
(6)服務規程および懲戒
(7)苦情申立
(8)解雇、解雇手当および特別解雇手当

 更に、法109条では上記(7)の苦情申立には最低で以下のことを盛り込む必要がある。
1)苦情申立の範囲および異議
2)苦情申立の手続および順序
3)苦情の審問および検討
4)苦情の解決方法
5)苦情申立て人および関係者の保護(苦情を申立たことを理由に懲戒しないことをうたっておく必要がある)

3.就業規則の改正も法に規定あり
規則は事情により改正することは必要である。ただし、その場合も新しく作成するのと同様に、法110条に基づき改正から7日以内に事業所において公布すると同時に、公布から7日以内に労働事務所へ写しを提出することが義務付けられており、これを怠った場合は法149条により、使用者は1万バーツ以下の罰金である。
改正の場合も労働官は法に抵触する部分は修正するように命令する権限があるので、公布する前に労働官の校閲を受けておくことが好ましい。

4.就業規則の用語は法の用語に合わせる
規則は、上記2.のように労働者保護法の重要な条項を盛り込まなければならないのであるから、タイ語の用語は法律の用語と同じ言葉を使っていないと齟齬をきたすことになるので注意したい。特に法5条では用語の定義を規定しているので、労働日、休暇日、時間外労働などは法と同じ用語を使用することである。また、例えば週休は日給者には無給であるので、明確にするには週休の法律用語であるワン・ユット・プラジャム・サパダーを使うという具合である。
規則の作成に当っては、日本語で先に作ってタイ語に訳すのが通常であるが、タイ語に訳されたものは、もう一度チェックして法律の用語に統一しておくことである。

5.法にない用語は定義を明確にしておく
特に職制については、法では用語がないが、規則では当然マネジャー、職長、フォアーマンなどの職制について定める必要がある。この場合、定義を規則の上で明確にしておかないと困る問題もあるのである。

例えば、法65条1項の(1)では、「雇用、賞与の支給、賃金の引下げまたは解雇に関し使用者を代理する権限を有する者」には時間外労働手当、休日時間外労働手当を支給する必要はないし、更に66条において、同様の者には休日労働手当を支給する必要はないのであるが、支給することにする場合は別として、支給しないのであれば、それに該当する職名と上記括弧書きの職責内容を明快にしておかないと、もめる元となるので注意したい。
例えば、マネジャーという職名を与えていても、上記括弧書きの内容の権限がないのであれば、時間外労働手当などは支給しなければならないことになるのである。これは就業規則でも明快にしておくと同時に雇用契約書でも明確にしておくべきである。

6.法による禁止事項は規則にも盛り込んでおく
法では38条から43条までに女性、44条から52条までに年少者(18歳未満)に立ち入りを禁ずる場所、就労を禁ずる仕事が列挙されているが、命令を無視して、または勝手に立ち入ったりする恐れもあるので、規則には明確に法通りに定めておく方が無難と思われる。一般の労働者がこの法律を読むことも期待できないし、法に従う順法精神があることも期待はできないのである。

7.労働者保護法にはない規定も盛り込む必要がある
(1)祝祭日は、法29条において1年間に13日以上の祝祭休日を定めて事前に労働者に公示しなければならないと定められているが、法とは別に「国民労働祝日に関する労働社会福祉省令」があり、ここでは5月1日を国民労働祝日と定めているので、上記13日には5月1日を必ず含めなければならない。

(2)年少労働者(満15歳以上、18歳未満)は44条から52条までに規定があるが、そのほかにも「労働者保護法に基づく省令6号があるので、この禁止場所に入ったり、行動をとらないように禁止条項を設けておく必要がある。例えば、この省令では法に追加して「エンジンまたは電気を使用するフォークリフトもしくはクレーンの運転、操縦の業務に就かせることを禁じているが、このような事項は就業規則にも盛り込んでおき、年少者が興味本位で操縦しないようにリマインドしておく必要があろうかと思われる。

(3)専門的な業務、経営管理的業務については、「労働者保護法に基づく省令7号」がある。この省令では2条において、技術または専門知識を伴う業務、経営管理業務、事務員の業務、商業に関する職業業務、サービス業務等については、法23条で定めている1日の通常労働時間は8時間と定めてあるのに対し、8時間を超えて労使で合意することができるようになっている。ただし、1週間の総計が48時間を超えてはならないことになっている。
この省令を援用して事務所での労働者の時間を工場と異なるものにしようと合意する場合、実際の業務がこの例外に当てはまるかどうか不明であればきちんと労働事務所で確認して、この省令に合わせた規則にしておかなければならない。この省令では該当する業務の内容が必ずしも明快でないところもあるのである。

8.懲罰および懲罰決定の方法
これも、7.同様法には解雇に関する規定以外にはないのであるが、明確にしておかないとルーズになる。ただ、労働者の解雇、減給など利害に直結する問題であるだけに、慎重に作成しておく必要がある。会社の最高責任者が日本人であり、労働者はタイ人であることを考えると、懲罰の審議、決定は懲罰委員会により審議、決定するのが望ましい。また、重要な事項であるだけに、労働法に通じた弁護士、労働事務所等の意見も充分聞いて規則を作成することが肝要である。

(おわり)

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