特定業種の国際競争力増進支援奨励について

特定業種の国際競争力増進支援奨励について

更新月日2020930 元田時男

1.投資委員会の新目標

 投資委員会(BOI)はタイ国内で新規事業を起こす企業を税制上、非税制上の特典を与えて支援することが役割で、その事業の根拠法として1977年投資奨励法があるが、2015年からは、従来の産業地方分散の方針を、技術の高度化を促進する方向へ役割を転換した。

 そして、従来の1977年投資奨励法に加えて、「2017年特定業種国際競争力増進法」が制定された。この法律は、投資奨励策として1977年投資奨励法の奨励特典を引き継いでおり、事務局もBOIの事務局が、この法律執行の事務局となっている。この法律が従来と異なるところは、奨励する事業が産業の高度化を推進するものに限っていることのほか、企業からの奨励申請を待つのではなく、むしろ積極的に案件を発掘する役割を担っているのである。そのため、投資委員会(BOI)のほかに「特定業種国際競争力増進政策委員会」(以下政策委員会と略称する)を設け、その下に「発掘協議小委員会」を設け、政策委員会の方針に沿って、有力案件を発掘して、案件の当事者と協議し、案件の具体化、奨励申請を支援する役割を担っている。

 また、事務局内に「特定業種国際競争力増進基金」(以下基金と略称する)を設立し、政府の補助金、寄付等を財源として、具体化に必要な資金を援助することになっている。そのため、当初の資金として政府が100億バーツを拠出することが定められている。

2.対象業種

 この法律により、発掘、奨励する業種は政策委員会が告示で定めることになっていて、政策委員会告示1/2560(2017年)で次の14業種が対象となっている。

(1)最新自動車産業
(2)スマート電子産業
(3)高品質の旅行業
(4)農業および生命技術産業
(5)高級食品加工業
(6)ロボット産業
(7)航空産業
(8)生命、生化学燃料産業
(9)デジタル産業
(10)医療産業
(11)国防産業
(12)リサイクル産業(廃棄物から燃料の生産、水資源の管理など)
(13)人材開発および特定産業の分析、研究
(14)その他政策委員会が同意する20年戦略に沿ったその他の特定産業

 以上のような産業で、タイ国にまだ存在しないか、新しい技術、知識を使用するもので、国外から導入、国内で開発するものを特定産業(目標産業)として振興しようとするものである。

3.申請の方法(政策委員会の告示1/2560(2017年)で定めている)

奨励を受けようとする者は、政策委員会へ、以下のような計画を出し、政策委員会が審査することになっている。

(1)国内での研究、開発または技術開発、革新の計画
(2)国内の教育機関、研究機関と連携して、技術開発、普及のための人材開発の計画

また、政策委員会の告示1/2563(2020年)では、特定産業には①Bio-Circular-Green Economy,医療、ロボット、自動化を含むこと。②タイではまだ生産されていないか、生産に高度な技術と知識を要するものであること。③生産もしくは使用は広く影響を与えるものを含み、研究開発計画、市場化計画、生産計画を2022年12月30日までに提出することが要求されている。

4.奨励策の内容(政策委員会の告示で定めている)

前述の審査が終わった後、申請者は以下の支援が受けられる。

(1)投資のための費用、研究、開発、革新技術の促進について、被奨励者が支出した金額を基金から支援する。
(2)法人所得税を最高15年間免除する。ただし、政策委員会は、土地代と運転資金を除く投資額の割合に応じて免税することを考慮する。
(3)その他の特典については、1977年投資奨励法に準ずる。        

 上記15年間の法人所得税免税特典に関し、従来の1977年投資奨励法は、2017年に改正され、法人所得税の免税特典は、従来の最高8年間の免税期間に加え、第31/1条が追加され、投資委員会が定める高度で、革新的な技術を使用、研究開発を行うような事業等については、最高13年間免税できることになった。これについては、前述の本法による最高15年間の免税期間が適用される産業、業種とどう異なるかは、本HPの主宰者の一人、SME Multi Consultant Co.,Ltd.の川島社長とよく打ち合わせの上、BOI事務局で確認されることをお勧めする。

(おわり)